食糧危機について考える本
うまいと言ってもらえる米作りを目指して情報集めををしている頃、上記タイトルの本を買いました。
内容は食味向上技術についても記述はあるのですが、それよりも日本の食糧危機や食の安全について主眼を置いた本でした。
日本に食糧危機が来ると思いますか?
この本が出版されたのは2009年3月で、もう8年も経ちます。
当時はそれなりに、おお!すごいこと書いてあるな・・、程度の感想でした。
現実には減反政策によって米を作りすぎないよう農家には生産調整が今も課せられているし全く現実味がありませんでした。
でも、今はどうでしょう?
サンマが捕れなくて高値に・・。
ドイツでは品質の良い粉ミルクが買いあさられて品薄に・・・、といった報道が飛び込んでくるようになりました。
原因は中国です。
この本に書いてあったことが現実味を帯びてくるのを感じました。
次のような記述があります。
まずは食の安全についてから。
中国現地でのリポートでは、こんなシーンが・・・。
「農民が食べるにしても量が多すぎます。じゃ、この野菜類はどこへいくんですか?」
「たぶん別の省都か、加工食品に混ぜられるんでしょうね」
「日本にも輸出するということ?」
「たぶん」
「でも重金属を含んでたら、輸入禁止になるんじゃないんですか」
「えっ、ご存じないんですか。日本は残留農薬は検査しますが、重金属についてはめったに検査しないから大丈夫です」
本の終わり近くにはこんな記述もあります。
学校給食に大量の農薬が投げ込まれ、大勢の子供たちが死亡した事件も聞いたが、当局が介入したらしく、新聞には掲載されなかった。
中略
こういう国から輸入している限り、いずれ日本にも「食の安全」を脅かす事件起こるだろう。取材であった日本人商社員は口々にそういったものだった。
「もしも中国が食糧不足になったら、確実に動乱が起こります。この国は常に飢えで動乱が起こってきたのです。だから、植える恐怖をよく知っている。そうなるとわかったら通貨の元を切り上げてでも、世界中から一気に穀物を買い漁りますよ。一気にです。徐々にではありませんよ。」
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食糧不足について、
少なくとも農水省の役人には期待できない・・
中略
取材したすべての農家もこう言い放った。
「農水省の言うとおりにして、うまくいったことがない」
むしろカギを握っているのは消費者なのだと思う。
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ヨーロッパでは消費者が自国の農家を護っているといった話を聞いたことがあります。
「それなら、俺たちで食の民間安保をやろうよ」
と宣言したグループがいて、それが福島県須賀川市で「ジェイラップ」と「稲田アグリサービス」というこの本の中に出てくる組織です。
単に農作物を作ればいいのではない。生産者と消費者をいかにつなげるか、主観的な「安心」と客観的な「安全」をどうやって認証するか、食糧難がやってきても耐えられる農業をどうやって再生するか、そんなことを試行錯誤するグループです。
それが本のタイトルでもある世界一うまい米作りをめざすグループで、その戦いぶりを描いています。
ここでJAも登場してくるのですが、彼らを支援する立場であるはずなのにこれを潰しにかかる情けない経緯も報告されています。
日本の米作りははじめから国際競争力低かったわけではなかったようです。
その理由についても解説があります。
久しぶりに読み返してみてこの本はぜひ多くの人に読んで頂きたい本だと思いました。
現在はもう中古品で手に入れるしかありません。
追記
この記事を書いた時が2017年10月でした。
その頃はもう古本しか市場にはなかったので、これで絶版になってしまうんだろうかと心配していました。
ところ、が改めてネットで検索してみるとしっかり増刷されていたではありませんか。
講談社様、ありがとうございます。